§ 自然吸気V12エンジンをミッドフロントに搭載するマラネッロの新型2シーター・ベルリネッタ、Ferrari 12Cilindri(ドーディチ チリンドリ)が本日発表
§ Ferrari 12Cilindriは、跳ね馬のDNAを完璧に体現し、洗練された彫刻的デザインと共に、比類ないパフォーマンスとハンドリングを実現
§ 名高いV12エンジンの“通”に向けて、最高出力は830 cvを誇り、1950~60年代のフェラーリのグランツーリスモをインスピレーションに、レース生まれの走りの興奮と汎用性を両立
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アメリカ・フロリダ州のマイアミビーチで開催したエクスクルーシブなイベントで発表
2024年5月3日、マイアミビーチ(アメリカ)発 1947年の創業以来、跳ね馬のエンスージアストが胸を高鳴らせてきたモチーフが一つあります。それは、ミッドフロントに搭載された自然吸気V12、マラネッロのファクトリーのゲートから雄叫びと共に最初に世に出たフェラーリ・エンジンです。本日、フェラーリのアメリカ上陸70周年を記念して、マイアミビーチの絶景をバックに、Ferrari 12Cilindriがメディアと一般の人々に公開されました。Ferrari 12Cilindriは、フェラーリが妥協なく追求するパワートレイン哲学の自然な進化形です。その哲学は、最初のDNAとフェラーリの中核を成す価値観を忠実に守りながら、数十年にわたって絶え間ない進化を続けてきました。
Ferrari 12Cilindriは、1950~60年代の伝説的グランド・ツアラーをインスピレーションとし、エレガンスと汎用性、パフォーマンスをやすやすと共存させて、V12をフロントに搭載するフェラーリ2シーターに課せられた使命を体現しています。この血統の最新の進化形として、唯一無二のレガシーを受け継ぐと共に、パフォーマンス、快適性、デザインの基準を新たな高みへと押し上げたモデルです。そのシルエットには、スポーティーさと品格が宿ります。シンプルでありながら調和したラインの中に可動空力デバイスを融合させて、比類ないパフォーマンスを保証。エンジンベイの眺めを堪能できるようボンネットはフロントヒンジとし、今やフェラーリ12気筒モデルの象徴となっている2組のツイン・テールパイプを備えます。
Ferrari 12Cilindriのエンジンは、マラネッロの伝説の礎となった名高いV12の最新進化版です。このバージョンでは最高出力が830 cvに達し、最高回転数は驚異の9500 rpmに引き上げられました。目を見張るパワーカーブによって、最大トルクの80%をわずか2500 rpmから発揮します。その結果、最高のスロットル・レスポンスを生み出す瞬時のピックアップと、レッドゾーンまでパワーが無尽蔵に湧き上がる感覚が実現しました。
Ferrari 12Cilindriのコックピットでは、長距離のドライブであっても、ドライバーにもパッセンジャーにも優れた快適性が約束されています。ガラスルーフと一流の素材が広々とした空間と開放感をさらに高め、ディスプレイは中央とドライバー用に加えて、3つ目をパッセンジャーの前に備えます。
Ferrari 12Cilindriはドライビングのエンスージアストだけでなく、パフォーマンス、快適性、デザインの新スタンダードを求める方にも向けられたモデルです。フェラーリV12だけが成し得るユニークな感動に忠実な長年のフェラーリスタに加え、快適性とイタリアンデザイン、胸躍るドライビング・プレジャーの融合を夢見る新たなお客様にも向けられています。Ferrari 12Cilindriは、変わることのないフェラーリのDNAについて極めて明確なビジョンを持つ“通”のために設計された、まさにひと握りの人のために作られたモデルなのです。
パワートレイン
Ferrari 12Cilindriに搭載するF140HDエンジンは、フェラーリの魂を最も純粋に表現した名高い自然吸気フェラーリV12の新バージョンです。その比類ないパフォーマンスと力強いサウンド、孤高の存在感は、フェラーリの歴史でも特に輝かしい数ページに名を残す伝説的ベルリネッタ・スポーツカーの後継モデルにふさわしいものです。エンジンの最高出力は830 cvに上り、難易度の高い革新的ソリューションを採用して、最高回転数が9500 rpmに引き上げられました。
改良されたコンポーネントやソフトウェアは、一部が既にスペシャル・シリーズの812 Competizioneに採用されており、同カテゴリートップのパフォーマンスを実現しています。V12の最高回転数をここまで引き上げるために、エンジニアはエンジン・コンポーネントの重量と慣性の削減に取り組みました。チタン製コンロッドの採用によって、同じ機械抵抗を持つスチール製より回転質量が40%低減しています。ピストンは、従来とは異なるアルミニウム合金を使うことで軽量化し、さらなる重量削減のため、リバランスを施した3%軽量なクランクシャフトを採用しました。
スライディング・フィンガーフォロワー式のバルブトレインは、F1におけるフェラーリの比類ない経験から生まれました。加えて、重量削減と、さらなるハイパフォーマンスを実現するバルブ・プロフィールが可能となるように、V12に合わせた特別な開発が施されています。スライディング・フィンガーフォロワーは、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施したスチール製で、油圧式タペットを回転軸として使い、カムの動きをバルブに伝えます。DLCの採用で、重要な接点の摩擦係数が下がり、エンジンの機械効率が大幅に高まりました。
ほとんどの改良点は、あらゆる作動状況でトルクデリバリーを最適化することに集中しました。その結果、痛快なまでに滑らかでシームレスなレスポンスを誇り、レッドゾーンで最高出力を発揮するエンジンが完成しました。
マニホールドとプレナムチャンバーのレイアウトは非常にコンパクトになりました。経路の短縮とカムプロフィールの最適化によって、高回転域でもパワーが解き放たれます。一方、トルクカーブはすべての回転域で最適化されました。これに貢献したのが可変ジオメトリー吸気ダクトのシステムで、吸気ダクトの長さを絶え間なく変化させて、シリンダーへの動的な充填を最大化します。
自然吸気エンジンでは史上初の革新的なソフトウェア・ストラテジーが開発され、選択したギアの機能として、利用可能な最大トルクを変更できるようになりました。その効果で、ドライバーはギアを上げるにつれてピックアップがスムーズかつリニアに変化するのを感じられます。これもまた、Ferrari 12Cilindriの走りの興奮を真にユニークなものとしている重要な要素です。
終わることのない加速とパワーデリバリーのクレッシェンドは、すべてのフェラーリV12の代名詞です。今回新たに、革新的なアスピレーテッド・トルク・シェイピング(ATS)によって、マラネッロのエンジニアは3速と4速ギアのトルクカーブを成形することができました。ここで使われる洗練された電子制御は、加速に影響を与えずにトルクの感覚を向上させ、ドライビング・プレジャーを高めます。また、新たなギア比の導入も、さらに高いレベルの加速の維持につながり、エンジニアが自然吸気エンジンの新しいトルクカーブを作り上げることに貢献しました。
猛烈なパフォーマンスと低燃費を両立させる上で不可欠だったのが、エンジンと潤滑サーキットの機械効率を最適化することでした。可変容量オイルポンプは、オイルがエンジン全体に循環し、その後、オイルサンプから蒸気と共に回収されるようキャリブレーションされています。ポンプ容量の制御には、エンジンECUがクローズドループ制御を行うソレノイドバルブを使います。エンジン回転と圧力に応じて変化させるため、必要な量だけオイルが供給され、したがって消費するエネルギー量も大幅に削減できました。また、ポンプの油圧サーキットとオイルタンクが新たな仕様となって、ロスが最小限にまで削減され、あらゆる作動状況で機能が最適化されています。
ガソリン直噴システム(GDI、噴射圧350バール)は、2個の燃料ポンプと4本のレールで構成され、圧力制御システムにフィードバックを送る圧力センサーを備えます。電子制御インジェクターは、エンジン1サイクルにつき最大3回の噴射を制御できます。イグニッション・システムは、ECUで常時モニターされ、シングルスパークとマルチスパークの機能を備えます。ECUは、エンジンが常にピークの熱効率で稼働するように、燃焼室内の燃焼も制御しており、タンク内の燃料のオクタン価を判別できる高度に洗練されたストラテジーを使って、ノッキングを防いでいます。
新たな排気システムは、最新の排出ガス規制(EU6E、中国6B、BIN50)に準拠するよう開発され、パティキュレート・フィルターと組み合わせたセラミック触媒コンバーターが導入されました。これは、現在ある最も先進的な排出削減技術であり、これに関わるソフトウェア戦略は時間をかけてキャリブレーションされました。
快適性とラグジュアリーに、フェラーリV12ならではのドライビングの高揚感を融合させる上で、不可欠なのがエンジンサウンドです。その実現を目指して、吸排気ダクトのあらゆる要素が最適化されました。排気ダクトは、各バンク6-in-1の等長マニホールドとし、中央部に革新的設計を取り入れました。その結果、点火順序による美しい倍音成分をすべて響かせる、フェラーリならではのV12の咆哮が実現しています。吸気と排気のシステムがそれぞれに放つ高周波音と低周波音を完璧に調整して融合させたことで、エンジンサウンドの音質も向上しました。ダクトの形状やサイレンサー・バッフル内部の流体力学は、背圧を最小限に抑え、パワーデリバリーの向上に貢献するように設計されています。排気システムの形状やカーブといったジオメトリーも完璧に磨き上げられ、リミッターまでの全回転域で、フェラーリの特徴的サウンドが極めて純粋な音色で響くことが保証されています。
車内で聞くサウンドが完璧なバランスとなるよう、吸気ダクトを改良し、レゾネーターの位置を変更しました。これによって圧力波も変わり、特に中周波音に関して、音域がより豊かになりました。その結果、車内でも混じり気のない豊かなサウンドをあらゆる走行条件で楽しむことができ、特にスポーティーなドライビングで顕著です。
Ferrari 12Cilindriに搭載する8速DCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)は、SF90 Stradaleに始まるほかのラインアップモデルでも、全面的に熱烈な歓迎を受けています。リム径21インチの大径タイヤもあり、このソリューションによって、従来のV12モデルに対して低速ギアのギア比が5%低くなり、タイヤでのトルクが12%増大しました。すべてが加速時の前後方向のパフォーマンスと変速時間(従来のV12ベルリネッタから30%短縮)に恩恵をもたらしています。
また、変速しながら加速する際のパフォーマンスが大幅に向上し、8速ギアの導入によって、高速道路での航続距離が伸びています。このように8速DCTによって、効率性と、すべてのギアでの小気味のよい変速がいずれも向上しています。
デザイン
フラヴィオ・マンゾーニとフェラーリ・スタイリング・センターのデザインチームは、Ferrari 12Cilindriで、従来のフェラーリのミッドフロント・エンジンV12モデルのスタイリングルールを大胆に書き換えることを目指しました。例えば812 Competizioneを特徴づけたような造形的要素からは明らかに離れ、代わりに、さらに洗練された要素を駆使しつつ、スタイリングの統一感に必要なデザインの厳格さは残しています。
デザインはクリーンなラインで構成され、それが各部のフォルムを強調して、全体をシームレスにつないでいます。サイドボディは非常にすっきりとしており、ディヘドラル形状からテールまで流れるように続きます。フェラーリならではの官能性は残しつつ、フェンダーは究極の幾何学的精度で造形されました。すべてのラインは、フォルムとフォルムが交差した結果です。また、より機能的なアプローチで形を捉え、懐古趣味とは一線を画しています。リア・フェンダーはたくましく力強い印象ですが、同時に完璧にコントロールされた造形です。フロント・フェンダーでは、そうしたたくましい緊張感が少し拡大され、サイドボディに沿って消えていき、ボディの一体感をさらに強めています。
ボンネットは極めて流麗な造形で、フロント・フェンダーと一体化しています。フェンダーとのカットラインを排除したことで、たくましいデザインに、滑らかに連続する面の印象が加わり、ボンネット全体に極めてクリーンな流れが生まれています。これをさえぎるのは、エンジンベイを冷却する2箇所の排気口だけです。Ferrari 12Cilindriでは、車の世界とは関係の薄いデザイン要素を模索することも目標の一つでした。そのため、フロントの特徴的要素がいくつか消えています。例えばヘッドライトの細長いフォルムや伝統的なグリル形状の代わりに、このモデルに元々備わる幾何学的形状や交差が生かされました。ヘッドライトは、巻きついた1本の帯の中に組み込まれ、そこからDRLがブレード状に現れます。
同様のアプローチはリアのアーキテクチャーにも採用されました。ここでも厳格さを中心テーマとして、ボリュームを引き算することで形を生み出しています。フロントと調和するように、テールライトも、リア全体を横切るくぼんだブレードの中に埋め込まれています。おそらくこれがFerrari 12Cilindri最大の特徴的テーマといえるでしょう。フェラーリ・スタイリング・センターのデザイナーたちは、ここでも巧みな手腕を見せて、技術的・機能的な要請と美を融合させています。
デザイナーはリア・スポイラーの代わりに、リア・スクリーンと一体化した2個の可動フラップを採用して、特徴的な三角形のテーマを作り出しました。全体としてすべてがシームレスにつながった印象で、まさに最先端技術を体現しています。このコンセプトの開発によって、デザイナーはFerrari 12Cilindriのキャビンに新たな手法を取り入れることができました。ボディカラーのフレーム表面をトレースして、リア・スクリーンのテーマと共鳴させ、黒いスクリーンを特徴とするキャビンの残りの部分に有機的に溶け込ませています。
テール部分も、非常にクリーンで一体感のあるフォルムで、ボディカラーがあしらわれています。さらに下の黒かカーボン・ファイバーの部分では、ディフューザーのフィンが際立ち、ボディがその上に浮かんでいるように見えます。この部分には、センサー類と2組のツイン・テールパイプも組み込まれています。テールパイプは合計4本で構成され、やはりまったく新しい形状で、金属製サラウンドによってサイズ感を弱めて、よりコンパクトな印象としています。
コックピット
Ferrari 12Cilindriのインテリア・デザインは、3つの異なるレベルに分かれています。第1のレベルの中心はダッシュボード上面で、左右へと回り込んでドアパネルの内張りに溶け込んでいます。次は中央部、3つ目はフットウェルとシートを含む部分です。各レベルは明確に区切られ、色と素材の組み合わせでデュアル・コックピットの効果を強めています。こうした色や素材は、シートや他のエレメントに使われて、エレガントな印象かスポーティーな印象を作り出しています。ラグジュアリーとパフォーマンスはフェラーリの代名詞ですが、加えてFerrari 12Cilindriでは環境サステナビリティーにも力を注ぎました。リサイクル・ポリエステルを65%含むアルカンターラ©をはじめ、サステナブルな素材を幅広く採用しています。
インテリアのスタイリングは、跳ね馬のデュアル・コックピット・アーキテクチャーをインスピレーションとしています。このレイアウトは、近年ではFerrari Roma、Roma Spider、Ferrari Purosangueでも採用されました。Ferrari 12Cilindriのキャビンはほぼ左右対称の構造で、ドライバーとパッセンジャーの2個のモジュールから成り、快適性もドライビング・エクスペリエンスへの関与も、驚くべき水準に達しています。
ダッシュボードは、内張りで覆われた上部のボリュームと、技術的な機能が集まる下部とがはっきり分かれており、これが横への広がりを強調しています。上部には2個の特徴的なビナクルがあり、ドライバー用とパッセンジャー用の装備と空調の通風口が配置されています。この2個のボリュームは、微妙に異なるエレガントなカラーと素材によってダッシュボード本体から切り離されて、ほとんど浮いているように見え、このエリアの軽やかな印象をいっそう強めています。
センタートンネルのパネルはダッシュボードから伸びており、そこから延長してきたように見えます。内張りで覆われた部分には大きな造形的な割れ目があり、対照的な素材によって強調されています。センタートンネルの内張り部分にあるアームレストは、メダリオン部分まで伸びて対照的な金属のエッジを際立たせ、フォルムのエレガントな交差が生まれています。トンネル本体は側面がえぐられており、ここでも宙に浮いているような印象が繰り返されています。内張りにはラグジュアリーな素材が使われ、Y字型をした金属のエレメントの中に、アイコニックなシフトゲートが配置されています。
Ferrari 12Cilindriでは、車内の居住性を柱の一つとして、専用のインテリアが開発されました。新しい広々としたサイズの着色ガラスルーフが取り入れられ、キャビンの明るさと室内の開放感を格段に向上させると同時に、夏でも冬でも最適な熱効率が確保されています。デザインの面でも、暗いガラスルーフがキャビン上部と完璧に一体化して、エレガントで洗練された印象を与え、フロントウィンドウからリア・スクリーンまでの連続性を感じさせます。
Ferrari 12Cilindriでは、3個のディスプレイで構成された新しいヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が導入され、フェラーリV12ベルリネッタの乗車体験を新たな高みへと押し上げています。主な機能はすべて、ドライバーからもパッセンジャーからも手が届く、中央の10.25インチ静電容量式タッチスクリーンで操作できます。加えて、15.6インチのドライバー用ディスプレイが、ドライビングとビークル・ダイナミクスに関するすべての情報を表示します。最後が8.8インチのディスプレイで、これによってパッセンジャーは常にドライビング・エクスペリエンスに完全に関与でき、真にコ・ドライバーのような感覚を味わえます。
ステアリング・ホイールは静電容量式です。これはラインアップの最新モデルすべてに採用されており、使いやすいようボタンには凹凸があります。そのため、たとえスポーティーなドライビング中であっても、より正確に素早く直感的に操作できます。Ferrari 12Cilindriは、Apple CarPlay®とAndroid Auto®を利用するモバイルデバイスとの接続システムを標準で装備し、いずれも新しいセンター・ディスプレイから簡単に操作できます。センタートンネルにはワイヤレス充電マット(標準装備)を備えるので、携帯電話の充電も簡単です。
Ferrari 12Cilindriのオプション装備には、Burmester®と共同で開発した高級オーディオ・システムがあります。15個のスピーカーで構成され、1600 Wの大出力を誇るので、どんなボリュームでもスピードでも、真に前例のない車内エクスペリエンスが実現します。ゆがみを最小限に抑えるリング・ツイーター技術によって、高音は極めてクリアに生き生きと再生。また、パワフルなデュアル・コイル・サブウーファーが、素晴らしく鮮明で豊かなサウンドを保証し、「ウルトラフラット・ヘッドライナー」によって、そのすべてを360度で楽しむことができます。
エアロダイナミクス
Ferrari 12Cilindriのエアロダイナミクスの最大の目標は、パフォーマンスについて妥協することなく、落ち着いたエレガントなモデルに仕上げることでした。トランクリッドの25 nmのノルダーとアクティブ・エアロは、テールの特徴的要素となっています。前者は、空気抵抗が最小のときに、車両の空力効率を維持するのに必要な再加圧を作り出します。一方、可動フラップは、「ロー・ドラッグ」(LD)と「ハイ・ダウンフォース」(HD)の二つの仕様を可能とします。
ロー・ドラッグのポジションでは、フラップはボディワークと整列し、気流に対して透明になるので、空気はさえぎられることなくその上を通過します。車速60 km/hまでは、車両のパフォーマンスにダウンフォースはあまり影響しないため、この仕様が維持されます。車速300 km/hを超えた場合も同様です。しかし、この2点の間の車速では、ダウンフォースが中心的役割を果たすため、車両の前後・左右の加速度に応じてスポイラーが動きます。ハイ・ダウンフォースのポジションを取ると、Ferrari 12Cilindriは最大ダウンフォースを発生し、空力的バランスの取れた状態が保証されます。
アンダーボディは、最大限に効率的なダウンフォース発生を実現するよう設計されており、これには中央ラジエーターからの気流の管理も貢献しています。アンダーボディ中央の開口部にはルーバーがあり、その平面的配置と側面の形状によって、勢いの弱い高温の空気の影響を最小限に抑えます。低圧になるフロント・タイヤ後方には、2個のルーバーが配置されました。これによってエンジン・コンパートメント内の過剰な圧力が抑えられ、ラジエーターの効率性が高まるほか、ドラッグが低減し、ダウンフォースの発生が促進されます。
812 Competizioneと同様に、フロント・アンダーボディでは、風洞で最適化された3組のボルテックス・ジェネレーターによってダウンフォースを発生します。また、フロント・アンダーボディは、フロント・スプリッターからの低温の気流を導くことで、ブレーキの冷却にも貢献しています。
アンダーボディ中央部は、利用できるエネルギーを維持したまま気流がリア・ディフューザーにきちんと導かれるよう設計されています。これを実現するため、トランスミッション・トンネルの開口部は縮小して、そこへ流れ込む空気量のバランスを取っています。リア・タイヤの前方部分は持ち上げられており、タイヤの前で気流をさえぎって後方へそらします。
リアのアンダーボディには1組のボルテックス・ジェネレーターがあり、効果的なダウンフォースの生成に使われると共に、気流をディフューザーへ導く役割を果たしています。レースの世界から公道スポーツカーに革新技術を移転するというフェラーリの哲学に従って、エンジニアはサイレンサーの電子機器用の吸気口をリア・フェンスの外縁近くに設けました。
冷却レイアウト
エンジンと補機類からの熱を排出するため、冷却システム全体を再設計する必要がありました。その結果、フロント・アンダーボディからの排熱が最適化され、フロント・バンパーには開口部が7箇所も設けられました。とりわけ、エンジン冷却液用ラジエーターと空調サーキット用コンデンサーは、前後に伸びるシャシー・エレメントの間のスペースに収められ、中央の開口部から空気を取り込みます。一方、オイル・ラジエーターは2個のエレメントに分けられて、左右のフロント・タイヤ前方に配置されました。左右のサイド・エア・インテークは2分割されており、外側がエンジンオイル用ラジエーターに、内側がブレーキの冷却に割り当てられています。
ブレーキの冷却ダクトはたっぷり確保され、空気を取り込む開口部は、ラジエーター用インテークの間と、フロント・スプリッター下部の2箇所あります。システム全体をオイル・ラジエーター用インテークと一体化して、フロント・ブレーキ用インテークの経路を最適化しています。サイド・インテークはL字型のエレメントに囲まれています。これは、開口部から入る空気の量を最大化すると共に、サイドボディに沿って気流を導くように設計されています。
エンジンベイ内部の空気は、ボンネットの2個のベントから排出され、これが過度な圧力を下げて、冷却効率を高めています。そのおかげで、アンダーボディの開口部を減らすことができ、最大限に効率的なダウンフォース生成が実現しました。フロント・タイヤ後方のフェンダー上にも、ホイールアーチからの排気口があります。これには、ブレーキ用冷却ダクトとフロント・ディフューザーによってアンダーボディに生じる過度な圧力を最小限に抑える役割があります。
ビークル・ダイナミクスとシャシー
Ferrari 12Cilindriは、まさに最先端のダイナミクス制御技術を盛り込んだフロント・エンジン・ベルリネッタです。ブレーキ・バイ・ワイヤの導入によって、他のラインアップモデルに搭載する最新の革新技術を採用できました。その一つが296 GTBでデビューしたABS Evoと6Dセンサーです。これによって、バーチャル・ショート・ホイールベース(PCV)3.0やサイド・スリップ・コントロール(SSC)8.0といったシステムによる最適で精密な制御が保証されるほか、制動距離が短縮され、より正確で再現性のあるブレーキングが可能となっています。また、まったく新しい制御ロジックであるアスピレーテッド・トルク・シェイピングは、伝説的な自然吸気エンジンが発揮するパワーデリバリーを、電子制御によって、いっそうスムーズでリニアなものに強化します。
SSC 8.0は、名高いフェラーリ制御ユニットの新たな進化版です。各システムが共通の言語でそれぞれに最適な作動モードを計算し、コミュニケーションできるようにして、車両全体のパフォーマンスを最大化します。また、SSC 8.0はFerrari 12Cilindriの各コントローラーを統合して、新ABS Evoとの自然な相乗効果を生み出します。
SSC 8.0はフェラーリの特許取得システムです。最適化によって推定の正確性と学習速度がさらに高まり(従来バージョンとの比較で10%向上)、グリップが非常に低い状況での制御も進化しています。グリップの推定を補助するのがグリップ識別ロジックです。これによって、EPS CPUからの情報と、SSC 8.0が推定した横滑り角を利用して、タイヤと路面の間のグリップレベルを操舵中であっても推定できます。この手法によって、限界域だけでなく通常の使用状況でもグリップの推定が可能となり、システムが実際のグリップレベルを学習する速度が向上しました。
Ferrari 12Cilindriは、四輪独立操舵(4WS)を備えます。スペシャル・シリーズの812 Competizioneでデビューしたシステムで、各タイヤの動きを独立して制御し、コーナリング中のヨー・マネージメントと、素早い切り返しでの応答性を向上させます。後輪操舵には、機械的に革新的な特徴があり、各アクチュエーターのポジション制御の精度が著しく高まりました。車軸の反応時間が短縮されて、結果的にコーナリング中の応答性が向上しています。ハンドリングの最適化には、フロント48.4%、リア51.6%という、ほぼ理想的な重量配分も貢献しました。また、812 Superfastから20 mmのホイールベース短縮も、応答性に恩恵をもたらしています。
タイヤ
Ferrari 12Cilindriには、ミシュランのPilot Sport S5かグッドイヤーのEagle F1 Supersportタイヤを装着できます。いずれもマラネッロのために開発された新サイズで、フロント275/35ZR21、リア315/35ZR21です。開発では、物理的手法とバーチャルの手法が活用されました。後者ではシミュレーターによるテストを行い、物理的試作品の数が減少したため、開発の時間と工程も短縮されました。
コンパウンド、トレッドの設計コンセプト、ケーシングの特性に関して最新の技術を採用して、パフォーマンスを最大化しています。広範囲のテストによって、ドライ路面でのグリップレベルとバランス、限界域とウェット路面での安定性といった性能のほか、快適性と車内外の騒音特性も向上しています。また、転がり抵抗は従来のフェラーリのフロント・エンジンV12ベルリネッタとの比較で10%低減しています。
シャシー
Ferrari 12Cilindriのシャシーは総アルミニウム製で、ホイールベースが812 Superfastから20 mm短縮された、まったく新しいものです。重点的に注意が払われたのが、ショックタワーやAピラー、Cピラーといった鋳造コンポーネントのジオメトリーで、ねじり剛性を高めると同時に軽量化も果たしています。
新シャシーの上を覆うグリーンハウスは、卓越したNVHと安全性が保証されており、加えて荷重ラインがクリーンなため、従来のフェラーリ12気筒モデルに比べて重量を増加せずに剛性を引き上げることができました。その結果、ねじり剛性は812 Superfastから15%高まり、動的挙動がより予測しやすくなって、結果的にサスペンションの精度にも恩恵をもたらしています。最後に、鋳造をより幅広く取り入れたことで、組立を必要とする押出コンポーネントの数が大幅に減少し、組立工程の効率性が高まりました。
フェラーリのプロダクションモデルでは初めて、100%リサイクル素材の二次合金がギアボックス・サブフレームのショックタワーに使われています。これにより、製造1台につきCO2排出量が146 kg削減されました。幅広い開発を行った結果、化学組成をわずかに変えることで、非リサイクル合金と同じ機械的特性が保証されました。この新合金の性能を実証するため、コンポーネントの静的・動的挙動を評価する幅広いテストが行われ、金属疲労に関してもクラッシュテストにおいても、優れた結果が確認されています。
7年間純正メンテナンス・プログラム
卓越した品質基準と、さらなるカスタマー・サービスの充実を重視するフェラーリでは、Ferrari 12Cilindriに7年間の純正メンテナンス・プログラムをご用意しております。フェラーリの全ラインアップを対象としたこのプログラムは、最初の車両登録から7年間、お客様のフェラーリのパフォーマンスと安全性が最高の状態で維持されるべく、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービスです。 この特別なサービスは、認定中古車を購入されたお客様にもご利用いただけます。
定期メンテナンス(20,000 kmごと、もしくは毎年1回。走行距離の制限なし)では、純正スペアパーツおよび最新の診断テスターを使い、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による詳細な検査を受けていただけます。これは純正メンテナンス・プログラムの魅力の一つにすぎません。このサービスは、全世界の市場で展開する正規ディーラー・ネットワークにてご利用いただけます。
Ferrari 12Cilindri – 技術諸元
パワートレイン
タイプ V12 – 65° – ドライサンプ式
総排気量 6496 cm3
ボア・ストローク 94 mm x 78 mm
最高出力* 830 cv / 9250 rpm
最大トルク 678 Nm / 7250 rpm
最高許容回転数 9500
rpm
圧縮比 13.5:1
比出力 128 cv/L
サイズ&重量
全長 4733 mm
全幅 2176 mm
全高 1292 mm
ホイールベース 2700 mm
フロント・トレッド 1686 mm
リア・トレッド 1645 mm
乾燥重量** 1560 kg
乾燥パワーウェイト・レシオ 1.88 kg/cv
重量配分 48.4%フロント / 51.6%リア
燃料タンク容量 92 L
トランク容量 270 L
タイヤ&ホイール
フロント 275/35 R21 J10.0
リア 315/35 R21 J11.5
ブレーキ
フロント 398 x 223 x 38 mm
リア 360 x 233 x 32 mm
トランスミッション&ギアボックス
8速DCT
電子制御
SSC 8.0:TC、eDiff、SCM、PCV 3.0、FDE 2.0、EPS、ABS-Evo(マネッティーノの全ポジションで稼動)、6Dセンサー、高性能ABS/ABD
パフォーマンス
最高速度 340 km/h
0-100 km/h 2.9秒
0-200 km/h 7.9秒
100-0 km/h 31.4
m
200-0 km/h 122.0
m
燃料消費量***
ホモロゲーション取得申請中
CO2排出量***
ホモロゲーション取得申請中
* オクタン価98のガソリンを使用、動的ラム効果5 cvを含む
** 軽量オプション装備車
*** WLTC複合サイクルによる